タイ古式マッサージの「セン」とは?10本のエネルギーラインの考え方

タイ古式の「セン」とは

タイ古式マッサージの「セン」は、タイ伝統医学で体の中を巡るとされる通り道です。主要な10本は「セン・プラターン・シップ」と呼ばれ、へそを起点に体へ広がると考えられています。施術者はこの線に沿って押し、伸ばしていきます。

この記事でわかること

  • タイ古式マッサージでいう「セン」の意味と、センを流れるとされる「ロム(風)」
  • 主要な10本のセンの名前と、名前が伝わってきた古い資料
  • センが経絡・リンパ・神経とどう違うか
  • 実際の施術でセンがどう使われているか
  • センの考え方を知ったうえで、受けるときに伝えておきたいこと

タイ古式マッサージの説明を読むと、「センに沿って押す」「エネルギーラインを刺激する」という言葉がよく出てくるでしょう。けれど、センが何本あって、どこを通るのかまで書かれていることはあまりありません。

この記事では、タイの伝統医学の資料と研究論文で確かめられる範囲に絞って、センの考え方を整理します。施術を受けるとき、セラピストの手がなぜ体の上を線のように動くのかが見えてくるはずです。

センについて先に押さえること

  • センは、体を巡るとされる「ロム(風)」の通り道を指すタイ伝統医学の考え方
  • 体には数えきれないほどのセンがあり、そのうち主要な10本を「セン・プラターン・シップ」と呼ぶ
  • 10本はへそを起点に広がるとされ、名前は王室の医学教本などに残っている
  • 血管やリンパ管のように解剖で見える管とは別の、伝統医学の概念
  • 2019年、タイ古式マッサージ「ヌアッド・タイ」はユネスコ無形文化遺産に登録された

目次

タイ古式マッサージの「セン」とは?体を巡る通り道の考え方

センは、タイの伝統医学で「体の中を縦横に走る線」として説明される通り道です。タイ古式マッサージは、このセンを手がかりに体をほぐしていきます。

ユネスコは2019年、タイ古式マッサージを「ヌアッド・タイ」の名前で人類の無形文化遺産の代表一覧に登録しました。その説明でも、センは体を縦横に走る線で、この線に沿った流れが滞ることで不調が起きると考えられてきた、と紹介されています。

出所: UNESCO「Nuad Thai, traditional Thai massage」(2019年登録・2026年10月19日閲覧)

センを流れるとされる「ロム(風)」

センの中を流れると考えられているのが「ロム」です。タイ語で「風」を意味し、体を動かす力のようなものとして扱われてきました。

在イスラエル・タイ大使館の紹介記事では、人の体には目に見えない数千のセンがあり、そのうち10本が主要なものだと説明されています。10本はへそから放射状に出て、体のさまざまな場所へ通じるとされます。

出所: Royal Thai Embassy, Tel Aviv「Nuad Thai: Ancient Wisdom, Modern Wellness (Part 2)」(2026年10月19日閲覧)

センは解剖で見える管とは別の考え方

センは、血管やリンパ管のように、解剖して目で確かめられる管ではありません。何百年も施術の現場で受け継がれてきた「体の見方」の一つです。

センは、体のどこを、どの順番でほぐすかを決める地図のようなもの。そう捉えると、施術の組み立てが理解しやすくなります。

主要な10本のセン|名前と、名前が残っている資料

主要な10本は、タイ語で「セン・プラターン・シップ」と呼ばれます。「プラターン」は主要な、「シップ」は10という意味です。

タイ伝統医学の学術誌に載った総説(Petrakard, 2012)は、10本の名前を次のように挙げています。

セン・プラターン・シップ(主要な10本のセン)

番号名前(カタカナ)表記の例資料で触れられている特徴
1イダーIda体の左側を通る線。月の風と結びつけられる
2ピンカラーPingala体の右側を通る線。太陽の風と結びつけられる
3スシュムナーSushumna体の中心線を通る線。イダー・ピンカラーとともに、ヨガの考え方にも同じ名前がある
4カーラターリーKalathari―
5サハッサランシーSahasrangsi―
6タワーリーDwari―
7チャンタプーサンChandabhusang―
8ルチャムRujam―
9スクマンSukumang―
10シキニーSikhini―

表記は総説の英語表記に合わせ、カタカナは読みの目安です。スクールや本によっては、イダーを「イッタ(Ittha)」、ピンカラーを「ピンカラ(Pingkhala)」、3本目を「スマナ(Sumana)」と書くこともあります。

1本ずつの通り道の説明は、資料や流派によって違いがあります。この記事では、出典で確かめられる特徴だけを表に入れました。

出所: Prapoj Petrakard「The Origin of Sen Prathan Sip」Journal of Thai Traditional and Alternative Medicine 第10巻第1号(2012)(2026年10月19日閲覧)

へそを起点に広がる主要10本のセン

  • へそのまわりから体の各所へ広がるとされる
    • 左右の対になる線イダー(左・月の風)/ピンカラー(右・太陽の風)
    • ヨガと名前が重なる線イダー・ピンカラー・スシュムナーの3本
    • タイ独自の名前の線カーラターリー・サハッサランシー・タワーリー・チャンタプーサン・ルチャム・スクマン・シキニーの7本

図:主要10本のセンの分け方(Petrakard 2012 の整理をもとに作成)

10本の名前が残っている3つの古い資料

総説によると、10本のセンは次の3つの資料に記されています。

  1. ワット・ポー(ワット・プラチェートゥポン)に伝わる按摩の図
  2. 病気の成り立ちを説く教本(ローク・ニターン・カムチャン11)の「セン・シップ」の章
  3. ラーマ5世の時代にまとめられた王室医学教本の「按摩の書」第1巻・第2巻

ただ、これらの資料には、センそのものがどこから来た考え方なのかは書かれていません。総説は、イダー・ピンカラー・スシュムナーの3本がヨガの「ナーディー」と同じ名前で、風との結びつきも一致している点を挙げています。そのうえで、ヨガの考え方がタイの伝統医学に取り入れられた可能性を示しています。

ワット・ポーはバンコクにあるタイ古式マッサージの総本山として知られる寺院です。歴史の流れはタイ古式マッサージの歴史で詳しく紹介しています。

センは経絡・リンパ・神経と同じもの?違いを整理

センの説明を読むと、東洋医学の経絡や、リンパの流れと似ていると感じる人も多いと思います。どれも「体の中の通り道」ですが、よって立つ体系が違います。

センと、よく比べられる「通り道」の違い

名前どの体系の考え方か目で確かめられるか
センタイ伝統医学。ロム(風)の通り道とされる解剖で見える構造としては確かめられていない
経絡中国の伝統医学。気の通り道とされる解剖で見える構造としては確かめられていない
リンパ管現代の解剖学解剖で確かめられる管
神経現代の解剖学解剖で確かめられる組織

センと経絡は、どちらも伝統医学が体を捉えるための考え方です。一方、リンパ管と神経は、解剖学で位置が確かめられています。

センの位置を人体に写して調べた研究もある

2025年には、王室医学教本に書かれた10本のセンと、宮廷式のタイ古式マッサージで使われる基本の10本の線を比べた研究が発表されています。専門家が男女のモデルに点と線の位置を写し、解剖の専門家が構造との関係を調べました。

結果として、2つの線の体系は、点の位置や通り道に大きな共通点があったと報告されています。センが「どこを押すか」の実践的な目安として受け継がれてきたことがわかる内容です。

出所: Namjan ほか「A Comparative Study of the Ten Main Lines (Sen Prathan Sib) and the Basis Massage Lines in Court Type Thai Traditional Massage with Anatomical Correlation」Procedia of Multidisciplinary Research 第3巻第5号(2025)(2026年10月19日閲覧)

施術ではセンがどう使われる?手の動きで見る流れ

施術中、セラピストの手は1か所を押し続けるのではなく、線をたどるように少しずつ位置をずらしていきます。これがセンに沿って押している動きです。

サロンの現場では、足先から始めて脚、背中、腕、肩と首へ進む流れがよく見られる組み立てです。押す動きのあいだに、ストレッチをはさんで体を伸ばしていきます。

センに沿った施術の流れ(一例)

  • 施術の中で、センはどう使われるか?
  • 1足から脚へ線をたどって押す手のひらや親指で、少しずつ位置をずらしながら押していく
  • 2押したあとにストレッチをはさむほぐした線の周りを、ゆっくり伸ばしていく
  • 3背中・腕・肩へと範囲を広げる体の向きを変えながら、全身の線を順番にたどる
  • 4首・頭まわりは弱めに仕上げる強く押したり急にひねったりしないのが基本

順番や時間配分はお店とコースによって違います。

図:センに沿って押し、ストレッチをはさみながら全身を進む流れの一例

押す強さより「流れ」を大事にする

センの考え方では、1点を強く押すことより、線全体をむらなくたどることに意味がある、と考えます。痛いほど押さなくても、流れに沿って体が順番にゆるんでいく感覚を味わえます。

強さの好みは人それぞれです。痛みが出たときの考え方はタイ古式マッサージと整体の違いでも触れています。

当日の流れを先に知っておく

センに沿って全身を進むため、施術は60分以上のコースが中心です。受付から着替え、施術後までの流れはタイ古式マッサージ 初めての完全ガイドにまとめています。

センの考え方を知ったうえで、受けるときに伝えたいこと

センは体じゅうを通るとされるため、施術も全身に及びます。気になる場所や避けてほしい場所は、始まる前に伝えておくと安心です。

  • 特に疲れている場所(脚・腰・肩など)と、軽めにしてほしい場所
  • 首・お腹まわりなど、強く押されたくない場所
  • 強さの好み(弱め・ふつう・しっかり)
  • 持病・けが・妊娠中など、体調で気になること

10本のセンはへそを起点にするとされますが、お腹まわりの施術はお店やコースで扱いが違います。食後すぐや体調がすぐれない日は、予約の時点で相談してください。控えたい体調の目安はタイ古式マッサージの禁忌で整理しています。

自宅でセンを意識したセルフケアをするなら

自分で体を伸ばすときも、1か所をぐいぐい押すより、脚の内側や外側を線でなぞるようにさするほうが心地よく続けられます。痛みが出るほど押さないのが基本です。

やり方はタイ古式マッサージを自宅でやる方法で紹介しています。

タイ古式マッサージのセンについてよくある質問

センは全部で何本ありますか?

数えきれないほどあるとされ、在イスラエル・タイ大使館の紹介では「数千」と説明されています。そのうち主要なものが10本で、「セン・プラターン・シップ」という呼び名です。施術の説明で「センに沿って」と言うときは、多くの場合この10本を指しています。

センの図はどこで見られますか?

ワット・ポーには、按摩の図が伝わっています。スクールの教本や解説書にもセンの図が載っていますが、線の通り道は流派や資料によって違いがあります。1枚の図だけを正解と考えないほうが安心です。

センは医学的に証明されていますか?

センは、解剖で目に見える構造としては確かめられていません。タイの伝統医学の中で受け継がれてきた体の見方です。2025年には、教本の10本の線と宮廷式マッサージの線を人体モデルに写して比べた研究も出ています。

センと経絡は同じものですか?

同じではありません。センはタイの伝統医学、経絡は中国の伝統医学の考え方です。どちらも「体の中の通り道」を想定している点は似ていますが、名前も数え方も別の体系です。

センを意識すると、施術の受け方は変わりますか?

変わります。セラピストの手が線をたどるように動く理由がわかると、どこが張っているかを伝えやすくなります。強く押されたくない場所や体調も、始まる前に一言伝えておきましょう。

まとめ|センは「どこを、どの順にほぐすか」の地図

センは、タイの伝統医学が受け継いできた体の通り道の考え方です。主要な10本の名前は、ワット・ポーの按摩図や王室医学教本に残っています。

この記事の要点

  • センは、ロム(風)が流れるとされるタイ伝統医学の通り道
  • 主要な10本は「セン・プラターン・シップ」。へそを起点に広がるとされる
  • 名前はイダー・ピンカラー・スシュムナーなど。表記はスクールや本で違う
  • 血管やリンパ管とは違い、解剖で見える管としては確かめられていない
  • 施術では線をたどるように押し、ストレッチをはさみながら全身を進む
  • 強く押されたくない場所と体調は、施術の前に伝えておく

センのことを少し知っておくと、セラピストの手の動きが「線」で感じられるようになります。次に施術を受けるときは、どの線をたどっているのか、体の感覚に耳をすませてみてください。

本記事はタイ古式マッサージ(リラクゼーション)に関する一般的な情報の整理であり、病気の診断や治療を目的としたものではありません。持病がある方・治療中の方・妊娠中の方は、施術を受ける前にかかりつけの医師にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

リラクゼーションサロンで5年間、お客様の体をほぐしてきたSuzukiです。いちばんの財産は、現場の経験のなかで「痛くない・揉み返さない」自分なりのやり方をつかめたことです。

独立してプライベートサロンを開いてから、「強もみで揉み返しがひどい」「どこに行っても疲れが取れない」という相談が増えました。タイ古式は本来、強く押す施術ではなく、ストレッチと呼吸で自律神経まで整えていく伝統療法です。このサイトでは、サロンの選び方や施術の前後にやるとよいこと、自宅でできるセルフケアをお伝えします。持病がある方や治療中の方は、かかりつけの医師に相談したうえで施術を検討してください。

目次